「これからは同居人だから、家事もしてもらいます。」
大学1年になった時、子どもに伝えた。
「家事は生きる力だから、今のうちに身につけておけば後々楽です。」
「なんといっても学生には時間があります。働きだしたらもう時間がありません。今のうちです。」
すると子どもは
「お母さんは変わった。高校生の時は何でもしてくれたのに、なんで急にそういうの?」
私は
「変わったのではありません。元々の考えです。高校時代はあまりにも時間がなくてできなかっただけです。大学生になれば、高校の時よりもいくらかは時間に余裕ができるはずです。いくら医者になるからと言って、何もできないままだったら、患者さんの気持ちにも寄り添えません。家事を通して社会を知ってください。」
と言って子どもの家事をスタートさせた。
担当は決めずに、まずはできるところから。
茶碗洗い。洗濯もの干し、ゴミ出し、風呂掃除、など。
最初は技術に不満もあったけれど、もともと私自身もそんなに得意ではない。おまけに私は、フルタイムで仕事しながらの日々なので、なんだってありがたいし助かる。
やってくれたら「ありがとう」を連発した。
私が仕事から帰った時、茶碗が食べたままの状態だったら、私は即座に不機嫌になった。
時々は文句を言いあうこともあった。それでも
もう同居人関係だから、やってあげる必要はない。とそのまま放置。
子どもは、徐々に私の不機嫌さに気付くようになり、自分から、回避するようになってきた。
ちょっとタイミング悪く茶碗がよごれたままだったら、子どもから先に
「あとで洗うから、そのままにしておいてね。」
というようになってきた。
しめしめ、力が伸びてきているぞ。
何度か口論を繰り返した。でも
いつのころからか、帰宅すると
「ごはん炊いているから。」
というようになってきた。
子どもがバイトで遅くなっても、絶対洗濯物は干さずにとっておく。
がまんがまん。
その積み重ねが、子どもの力を伸ばす。
そうやって大学生活の前半で、家事力も一通り身に付けた。
お掃除なんて、私よりていねい。ただし自分の部屋中心だけど。